オジイチャンとオバアチャンが
門から出てきた。
ワシは、踏み切りで電車が通り過ぎるのを待っていた。線路沿いにその家はあった。
オバアチャンは、涼しげな夏の着物を着ているが、ようやく歩けるという感じで、線路の脇の柵に掴まっていた。
オジイチャンは、そのオバアチャンの手を引いているのだが、なにせオバアチャンは、歩くのがやっとで、柵に掴まって一歩ずつしか歩けない。オジイチャンは、少し困っていて、それでもオバアチャンの草履が、内股になってしまって、歩きにくいので、しゃがんで直してやったりしている。
オバアチャンは、なんとか柵に掴まってでも、一歩ずつでも歩いて、踏切まで来たいのであるが、足が悪くて思うように進まないのであった。
電車が近付いてきたので、警報機がカンカンカン、と鳴っている。ふたりは踏み切りの中ではないから、危なくはないのだが、それでも、なんだか警報機が鳴っていると、不安になってしまう。
電車がやってきた。轟音を立てて、通過してゆく。オジイチャンとオバアチャンは、まだまだ家の門から5メートルくらいしか歩けていない。
ワシは、どうしたものか、ちょっと考えたが、オバアチャンを背中に負ぶってやるという勇気もなく、電車が通り過ぎて、踏み切りの遮断機が上がったので、自転車を押して、踏切を渡ってしまった。
負ぶうといっても、踏切を渡ってそれから駅までは、普通に歩いても10分はかかる。駅まで行くには、ワシは自転車であるからムリでもあった。
どうしてタクシーを呼ばないのかな、と思ったが、なにか呼べない事情があるのかもしれない。たとえば、どこへ電話すれば良いのか分からないとか、出かけようとしたら急に足が痛くなったとか・・・・。
今日、ふと見かけた光景だが、なんとなく心に残ってしまった。なぜなのか、よく分からないが。
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